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2025年5月12日、イギリス議会上院は「出生時の性別」を公的データとして明記させる法案修正を支持。議論の中では「パスポート情報では生物学的性別を確認できない」という趣旨の発言も出され、トランスジェンダーの権利をめぐる対立が鮮明になっています。
情報元:The Independent, “Passports cannot be used to check biological sex says peer as Lords stands off with Government”, 2025年5月13日
https://www.independent.co.uk/news/uk/politics/patrick-vallance-transgender-debate-lords-amendment-labour-b2749741.html
ニュースをざっくり整理すると
法案の修正案は、データ活用関連法に対する保守党の修正提案で、公的データ記録において「出生時の性(sex at birth)」「先天的性別(natal sex)」「生物学的性別(biological sex)」のいずれかに基づく性別記録を求めるものです。
これに対し、労働党は反対しましたが、上院では賛成200票・反対183票で可決されました。
さらに、保守党のアーバスノット卿は、「高齢女性の介護を女性に限定するようなケースで、確実に“女性”と確認する手段がなければ困る」と述べ、パスポートによる性別確認が不正確であると批判。
科学担当大臣ヴァランス卿も、「パスポートの性別は生物学的性別を反映していないため、確認手段にはならない」と明言し、「生物学的性別の確認には、それを明確に記録したデータが必要」と述べました。
政府側は、「慎重な適用」「配慮ある検討」を強調しており、上院と下院の間で引き続き調整が行われる見通しです。
今回の出来事を受けて
今回の上院の動きは、「トランスジェンダーの性別移行を公的に尊重しない」方向へ英国の制度が動きつつあることを示すサインと見ることができます。
特に、パスポートなどの本人確認文書が「性自認」を反映していても、それを「信頼できない」と否定する姿勢は、トランス当事者にとって実質的な権利制限につながります。
このように、「誰が女性か」「どのように確認するのか」という問題が、英国でも明確な制度設計をめぐって政治化しており、性自認の権利と“客観的な性”の主張とのあいだに緊張が生まれている状況がうかがえます。
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